大糸タイムス主催、大糸タイムス友の会・大北医師会・大町市共催
「老健とは?」

市民のための健康講座



介護老人保健施設ライフ2 施設長 中谷易功医師


 「第14回市民のための健康講座」(大糸タイムス社主催)は12日、大町市のフレンドプラザ大町で開いた。大北地域から約100人が訪れ、松川村の介護老人保健施設ライフ2の施設長で医師の中谷易功(やすのり)氏による「老健とは?」を聴講。介護老人保健施設(老健)と特別養護老人ホームの違いや、老健を通して認知症や介護・医療保険の仕組みなど現代が抱える問題について学んだ。



 【特養(特別養護老人ホーム)と老健(老人保健施設)の違い、介護保険と医療保険】

 保険制度とは、自動車保険などと一緒で、簡単に言うとみんなで負担金を出し合い、保険が必要になった利用者本人の負担を軽減する制度。2000年に始まった介護保険は40歳以上が保険料を支払い、利用できるのは原則として65歳以上で、要介護認定が必要となる。
 特養は「ついのすみか」。出たいといえば出られるし、病気になれば病院に行くこともありえるが、そこに入れば亡くなるまでいても良い。一方、老健は原則として「自宅へ帰る」。ただ、高齢で一人暮らしの人や昼間が一人になり生活できない人など帰れない人もいる。
 特養と老健に入っている人にそれほど違いがない場合が多い。本来の形で病院や老健でリハビリし、すぐには家に帰れないけれど落ち着いたら家に帰る人もいるが、それは正直全体の半分もいない。あとは、特養に入りたいけれど空いていなくて入れずにいる「特養待ち」の人がほとんど。
 特養も老健も介護保険の報酬で運営している。要介護の程度によって違うが利用料が決まっており、食事代や部屋代は別途負担になっている。9割は保険負担、1割が自己負担。そのお金を給与や暖房費、おむつ代などに使い、施設を運営している。年収に応じて軽減措置もあり、生活保護の人も入れるようになっている。
 老健の場合、入所者100人あたりに1人の常勤医師が必要で、看護師も10人に1人の割合でいる。特養の場合は、医師が常駐するわけではなく、嘱託医。なにかあったときや週に1、2回の回診が行われる。
 老健の長期入所では、介護保険が優先となり、簡単に医療保険が使用できなくなる。介護保険の中に薬代や検査代も含まれ、薬代は老健の負担になるが、薬が多いと入所者の肝臓への負担も増える。そこで、老健では薬の内容を整理し、血圧を下げる薬など生命に関わる薬以外を見直すこともしている。



 【老健入所の条件、要介護認定、ADL(日常生活能力)と認知症】

 老健入所は、要介護段階1〜5、1週間や3日などの短期入所では要支援1、2も含まれる。短期、長期の入所では扱いが異なり、短期入所では主治医がいて医療保険も利く。
 要介護などの認定は、大北地方では北アルプス広域連合が行い、認定委員会ADLは9段階、認知症は8段階で程度を判定する。ADLの一番悪い段階はC2で寝たきりで寝返りも打てない状態。認知症はWが一番重く、会話能力がなくコミュニケーションがとれない。これらになると、おそらく要介護5に認定される。



 【老健の仕事、介護とリハビリ、医療は】

 老健で一番大きな仕事は生活介護で、具体的に言うと入浴や排せつ、食事、レクリエーションなど。本人ができることを介助するのは能力を摘んでしまうので、自分でできる人は自分でやってもらい、レベルに応じて介助する。血圧や睡眠の状態なども記録し、食事の摂取量や体重のチェックもする。施設のおやつには、入所者とともにホットケーキなど焼いたりして作業療法を取り入れている。
 医療は現状維持が基本となり、家族の意向も聞き、看取りにも対応する。入所判定会は週に1回行い、相談員が情報を集めるなどして会議を行う。透析や在宅酸素など医療保険をかなり使っている状態の人は入所が難しいと考えられる。



 【老健における医療の位置づけ】

 病気は大きく分けて急性期と慢性期で、別の言い方をすると、発症直後の不安定な時期と安定している時期。老健で扱うのは慢性期の安定している時期で、安定していても、脳梗塞や転んで骨折するなど新たな病気が出れば不安定な状態になり、病院などに行き、医療保険の適用になる。現状維持としての薬は出すが、新たな薬を出すことは難しい。



 【認知症をめぐる問題】

 認知症はWHO(世界保健機関)で、一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態。それが意識障害のないときにみられると定義が決められている。昔は病気という認識が少なかった。
 認知症は昨日食べたものを忘れるなどの記憶障害と場所や日付がわからない見当識障害がある。認知症は自分の状態を説明する言葉がなかなか見つからず、認知症から回復した人もいないため、想像することしかできず、永遠の未知なるゾーンになっている。
 しかし、認知症でも残るものは自尊心や羞恥心。世話をする家族は慣れてくるが、認知症の本人は恥ずかしさや申し訳なさなどストレスが起こる。老健ではそれが「仕事」。プロフェッショナルとしてやっていることであるため、本人も後腐れなく日々続いていく。



 【在宅介護がいいのか】

 平成24年度から、厚生労働省が在宅介護を推進している。老健は「ついのすみか」ではないので、ずっといられると入りたい人が入れない。何年も施設にいると、在宅復帰率が下がる。しかし、在宅復帰率が高すぎても利用者の名前も顔も病状も把握できない弊害もある。



 【認知症の安住の地は】

 在宅介護といっても、昼間は家族が仕事で家に一人になってしまう問題もある。みんな不安を抱えてしまう。在宅を進めると必ずその問題にぶち当たる。そして近所の人から哀れみの目を向けられていると感じることもあり、本人にとってもつらいのではないか。
 施設は周囲には同じような状況の人がいて安心感があり、うまく作用しているのでは。生活の介護はもちろんだが、精神的な面でもストレスを発散できる。金銭面に関しても、介護保険以外の心配はない。認知症の安住の地は老健なのでは。
 入所者家族の方には、医療保険を使ってしまう目薬や貼り薬などたまに使う薬を病院にもらいに行かないこと、感染症があると次の人も入れないので病気を施設に持ち込まないこと、連絡が常につくことをお願いしたい。




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