大糸タイムス主催、大糸タイムス友の会・大北医師会・大町市共催

忍び寄るサイレントキラー
「血圧管理で病気リスク回避」

市民のための健康講座


 大糸タイムス社主催の第18回市民のための健康講座がこのほど、フレンドプラザ大町で開かれた。大町協立診療所の上小澤護所長が「高血圧」をテーマに講演し、高血圧からの脱却や予防方法を詳しく説明した。




高血圧は静かな殺し屋


 サイレントキラー。静かな殺し屋。症状もなくしっかりと忍び寄ってくる高血圧。
 日本は長寿国だが、ただ長生きする平均寿命ではなく、寝たきりや病気にならず全うする健康寿命がどれだけあるかが重要。
 その健康寿命を邪魔しているものは何か。要介護者のうち4分の1は脳卒中と心臓病で、その主な原因が高血圧。
 国内の死因の一番はガンだが、後期高齢者においては、脳卒中と心臓病を合わせた疾患がガンを超えている。
 どんな要因が人間の死に関わっているか。一番はタバコ。長生きしたかったらタバコはやめなくてはならない。タバコを吸っていると10年寿命が縮まるといわれている。
 2番目は高血圧。心血管病の原因のダントツ一位。高血圧は我々の死に直結している。高血圧に起因する死亡者数は年間約10万人。アジア人は、白人に比べその危険度が高くなる。
 血圧が高い危険度は、脳卒中や狭心症など白人に比べアジア人のほうが大きく影響する。65歳未満ではその危険度は顕著だ。つまり、若いうちから血圧が高い人ほど、脳卒中になりやすい。
 健康な人を数十年にわたり観察してきた日本のデータによると、数値では、血圧が高値である人ほど脳卒中の発生が増えている。




血圧のメカニズム


 血圧とは、心臓が全身に血液をおくる時に血管にかかる圧力。
 血圧を調整する仕組みは体の中にある。神経とホルモンが主に関与しているが、最終的調整は脳内の延髄にある循環中枢とよばれる場所。血管内のデータがそこに集結し、心臓、腎臓、副腎、血管に働きかけ、ホルモンを使い調整している。この、どこかに一か所でも異常があると、血圧はおかしくなる。
 最近になり、血圧が高くなることの原因として、交感神経の活動が活発になりすぎていることが重要であることが分かってきた。
 血圧は、もともと変動しているもので、正常と異常を決めることは難しい。世界保健機関(WHO)で決めた値が一つの標準。年齢や病気のあるなしで変わってくるが、収縮期の値が140、拡張期の値が90が正常異常のライン。
 140〜90内は正常で、それを超えてくると血圧が高いといわれている。
 理想は120〜80ぐらいの値。症状がない限り、低いほうが体には良い。すべての年代において、高血圧により心血管病の危険性が高まるが、若いほど危険度は大きい。
 40〜64歳の年代において、140〜90以上あったら、心血管死亡の割合が理想の血圧の場合の3倍になる。160〜100だったら5倍、180〜110だったら9倍になる。
 高値を示したところで、症状がないことが多く、当事者は何とも思っていない。そこが、高血圧が「サイレントキラー」と呼ばれるゆえん。




高血圧の要因を知る


 高血圧の原因。9割は原因不明。まだまだわからないことがたくさんある。食塩の取りすぎ、ストレス、肥満、加齢も原因とされている。腎臓が悪い、血圧をあげるホルモンが増えてしまう、薬を飲んであがる、睡眠時無呼吸症候群など二次性のものもある。
 高血圧の人は、自身の両親や周囲の人間がどんな病歴があるのか調べる必要もある。
 食塩の摂取量と血圧の関係。世界中で調べられたが、塩分をたくさん摂ると血圧が上昇するということは確立された常識となっている。
 南米のある地域では、食塩をほとんど摂らない。一日1〜2c程度で、そこでは高血圧の人はいない。年を重ねても血圧はあがっていない。
 日本では、個人差はあるが、血圧に問題ない人でも、たくさんしょっぱいものを摂ると血圧はあがる。
 遺伝や体質、人種によっても反応は違う。日本人などアジア人は塩分をたくさん摂ると血圧があがる傾向とされている。




減塩効果で高血圧脱却


 日本人の食塩の摂取量は、ここ10年で減ってきている。2013年のデータでは、男性が一日平均11グラム、女性が9・4グラム。しかし世界でみると摂取量はまだ多い。2015年の塩分摂取量の目標値は男性8c、女性7c未満。
 減塩食は6cとされ、血圧で薬を飲んでいる人は1日6cを目安としている。
 減塩の効果には、個人差があるが、1日1c減塩することができれば血圧の値が約1下がるということがこれまでの研究で分かっている。
 心血管病で亡くなっている人の5割、脳卒中の5割以上が高血圧だったというデータがある。
 2010年の国民健康・栄養調査調査で、30歳以上の男性の60%、女性の45%、50歳の男性、60歳の女性の60%が高血圧とされ、国内では4300万人。女性では減っているが、中年以上の男性で増えている。




血圧正常で病気リスク減


 昔の典型的な日本人の高血圧は、寒い地方のやせ形の男性が塩分をとりすぎることで見られたが、最近はメタボリックシンドロームによる高血圧が増えてきた。
 アジア人の特徴は、脳卒中が冠動脈の疾患より多い。血圧が高いことが、心臓血管イベントと関連している。食塩のとりすぎ、肥満メタボが増えている。
 国は健康寿命を延ばすために、心血管病を予防しようと考え、21世紀における健康づくり運動を推奨している。10年間で血圧の平均値を4下げたいとしている。下げる方策に4つあげる。▽減塩、野菜や果物を多く摂る、▽歩く数を増やし適度な運動継続、▽飲酒を控える、▽降圧剤利用率の増加、これらがうまくいけば、脳卒中の死亡は年間で約1万人、冠動脈疾患の死亡は約5000人減ると試算されている。




さまざまな病気に関係する高血圧


 三大死亡原因をみると、全国は1位ががん、2位が心臓病、三位が肺炎。長野では3位に脳血管疾患。
 長野は、がんと心臓病は全国平均より低いが、脳卒中が多い。要因はいくつかあるが、塩分摂取量は全国平均に比べかなり高い。2c程度は高い。それぞれの年齢層でみても、9割ちかい人が基準摂取量の値を超えている。
 家族全員が子供や孫の代の高血圧を減らすということを意識し、しょっぱいものを減らし、野菜を多く摂ることを進めることが大切。
 動脈硬化の進行はおそらく、生まれたときから始まっている。体質もあるが、外からの要素がスピードを加速させる。
 それを進める上で問題になってくるものは5大危険因子といわれている喫煙、高血圧、脂質異常症、肥満、糖尿病。この中で自分ですぐにやめられるのは喫煙。
 最近の話で、体内にたまった内臓脂肪が心血管病を進めることがわかってきた。
 メタボでは、過栄養や運動不足などにより必要以上に脂肪を内臓にためこんでしまう。健康な脂肪とは違い、よくない物質がたくさん出て、血糖や血圧をあげ病気を進めてしまう。
 高脂血症、高血圧、高血糖、内臓脂肪のセットは「死の四重奏」とよばれ、心血管病をおこしやすくする。生活習慣の乱れを修正する必要がある。
 元来、脂肪細胞は、体温を保ち、内臓を守り、エネルギー源になる性質を担っている。日本人の先祖は、農耕民族で飢えに強い。しかし、血糖をコントロールするインスリン分泌は欧米人の半分で、食べ過ぎには弱いのかもしれない。
 ここ十年をみると、総カロリー数は変化ないが、脂肪分が圧倒的に増えている。
 食習慣の見直しと適度な運動が内臓脂肪を減らすのに効果がある。




家庭計測で意識 基準値内を維持


 高血圧。家では正常値だが、診察室で測れば高い、低いということを経験したことがあると思うが、それも事実。診察室で正常値でも、自宅で測れば高い数値が出るという仮面高血圧がある。酒を飲んだ翌日の寒い朝は数値はぐんとあがる。
 現在では、24時間の血圧を測ることもできる。一日の中で、どのように変化するか。測るたびに数値は違う。通常、夜の血圧は日中の1〜2割下がるといわれている。
 血圧変動に影響を与える重要な要因は2つ。動脈硬化で血管が硬くなる。神経性因子として早期の交感神経活動が亢進していると変動しやすくなる。
 高血圧は、夜間や早朝で心血管病のリスクを増やす。また、血圧の値だけでなく、血圧変動の大きさも心血管死亡リスクを増やす。加齢や酒の過剰摂取、睡眠不足、運動不足などがかかわってくる。
 血圧は、24時間において基準値の範囲内にあることが理想。
 家庭で測る血圧値を大事にするのが最近の考え。診察室と家庭で測り、大きく変わっていたら家庭の値を優先する。
 血圧計もさまざまだが、肘で巻くタイプが正確な数値がでやすい。
 測るたびに違うものと思い、朝と晩、同じ条件下で1日2回測り、値を参考に、朝の値が高くならないようにすることが重要。




「ちりつも作戦」で高血圧脱却


 高血圧の治療。危険な状態の人には投薬しかないが、リスクが低い場合は生活習慣を修正してもらい、測りながらどのぐらい下がるか見るのが流れ。
 治療の目標は、年齢や病気の状態によってたてるが、140〜90を超えないのが治療の目安になる。自宅ではさらに5低く考える必要がある。
 塩分摂取は、3分の1は調味料、3分の1は加工食品、3分の1は汁物・麺類による、という報告がある。減塩の工夫として、味付けに香味野菜と香辛料を上手に使う、量を減らす、ラーメンの汁も飲み干さない、食品の表示を確認する。
 男性は今までの約半分、女性は3分の2まで食塩の摂取量を減らせれば血圧が下がっていくのではないか。
 血圧は、食塩1c減らせば1、メタボなら1`痩せれば1下がるといわれている。減塩、減量、運動、節酒を組み合わせれば20くらいは下がる。
 効果が出るまで時間がかかるので、高値の場合は、薬を飲みながらやっていき、値が下がれば医者と相談しながら薬を減らせばいい。
 健診で血圧が高めといわれたら、症状がないことを理由に放っておかないでほしい。タバコをやめる、塩分摂取を控える、野菜や果物を食事に取り入れる(腎疾患や糖尿病の方は注意が必要)、飲酒やおやつ、糖分が入った飲み物の量にも注意して、適度に体を動かす機会を増やす。
 少しずつでも続ける「ちりつも作戦」が大切。健康で年を重ねる可能性を高めるために、生活習慣を見直してほしい。




トップページ 講座一覧へ ●当サイト木掲載の記事・画像の無断転載を禁じます。すべての著作権は大糸タイムス社に帰属します。
Copyright(C)2007-2017 OHITO TIMES Co., Ltd. All Rights Reserved.