大糸タイムス主催、大糸タイムス友の会・大北医師会・大町市共催

中澤治彦さん「認知症」を語る
「受容することで心穏やかに」

市民のための健康講座


 大糸タイムス社主催の第19回「市民のための健康講座」(大糸タイムス友の会、大北医師会、大町市共催)がこのほど、市総合福祉センターで開かれた。講師に精神神経学会専門医、精神保健指定医で中澤医院院長の中澤治彦さんを招いた。心の健康に関心を寄せる市民約100人が集まり、認知症に対する理解を深め、老いや病い、死を受容して、穏やかに暮らす心の持ち方を学んだ。


 中澤さんは「この地で、心穏やかに過ごすために〜3苦(老・病・死)および生きることの辛つらさと付き合うには〜」と題して講演。日本人の認知症発症率については、「65歳を過ぎて8%くらいの方がなり、将来的には20%を超えるとも言われいる」と報告。その上で、「もの忘れがあれば、すぐに認知症という訳ではない」とも述べ、ヒントを出せば思い出すような年齢相応のもの忘れが「再生の障がい」であるのに対して、認知症は「記銘力の障がい」だとして、その違いを説明した。

 来場者に向けては、「1週間前のランチで食べたメニューを覚えていますか?」と問い掛け、「まず、何を食べたかすぐに出てくる人は少ないでしょう」と話した。忘れる原因については、「すべてを頭の中に入れておこうとしても入り切らない。試験勉強で一夜漬けで覚えたことが、試験を終えると忘れてしまうのと同じ」と説明した。「忘れる」現象については、「暗記できないのは老化ではなく、脳が進化し忘れてもいいと言っている」とも教えた。

 講演の中では、「サザエさん」の「波平さん」と「フネさん」の年齢を問うクイズも出され、「波平さん54歳」「フネさん48歳」という答えには、会場からどよめきが上がった。日本人の平均寿命の推移を分かりやすく説明するためのクイズで、1947年で「男性50・06歳」「女性53・96歳」だった平均寿命は、2015年に「男性80・79歳」「女性87・05歳」まで延びたことを説明。「皆さんは健康で若くなっている」と勇気づけ、現在でも65歳以上の90%、将来的にも80%の人が認知症にならないという逆算も紹介しながら、「人生50年の時代とは違い、残りの人生設計が必要になる」と呼び掛けた。



災害時の心理と死への向き合い方


 突然の災害に見舞われた時の心理については、「バイアス」(偏見)という概念を紹介。「正常性バイアス」とは、予期しない事態に直面した時、「ありえない」という先入観と偏見が働くことで、物事は正常の範囲だと自動的に認識する心が動き、それにより「自分だけは大丈夫。ここは安全だと思い、避難しない」と考えるという。一方、「多数派同調バイアス」では、どうしたらよいか分からない時、周りの人と同じ行動をとることが安全だと考えがちになるとした。


 避けられない自然災害への心構えと同じように、死の訪れへの向き合い方については、がん患者への緩和医療で用いる死の受容モデル(キューブラー・ロスによる5段階モデル)を紹介。「否認と孤立」の第1段階から、「怒り」「取り引き…神や仏にすがる」「抑うつ」「受容」までの5段階に対して、中澤さんは「私見によるアレンジモデル」を紹介。第1段階の「否認と困惑…頭の中が真っ白」から、「他者への怒りや自責感」「割り切り…無理やり何かにこじつけて、割り切ろうとする」「抑うつ…何もしたくなくなる」「受容」までの5段階に分けた上で、「第4段階までを揺れ動き、必ずしも第5段階には至らない」とした。さらに、自分が初期の認知症になった時や、家人が認知症を発症した時に当てはめて、「受容」に至るプロセスを考察、「受容は難しいができると楽になる」とした。



 「受容」については禅の思想を取り入れた「森田療法」も紹介。「手の震えや赤面などの症状にはとらわれず、人前で話せたことを認める」という考えから、「受容するとは、あるがままに受け止めるということで、仕方ない、あきらめる、いたずらにポジティブな思考をすることでもない」とも話した。

 認知症の受け止め方については、「毎朝、今日も生きていてありがたいと思うようになった」という弘法大師の62歳時の話を例に、「認知症になるまで長生きできて幸せと考えられれば、ありがたくなる」と助言。「受容とは事実を明らめること。当たり前ではなく感謝する気持ちをもつこと」と話した。

 英語の「GOODBYE」は「GODBY」から変化した言葉で「神のもとへ召しますように」という意味だとも紹介。一方、日本語の「さようなら」のについては、「さようであるならば=そういうことであればそういうことであるのだな」と読み解き、「死んじゃったよね」と、あるがままに死をも受け入れる日本人の心の現れだとした。



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