大糸タイムス主催、大糸タイムス友の会・大北医師会・大町市共催

吉村医院院長・吉村一彦氏
「健康長寿を目指して」

市民のための健康講座


 大糸タイムス社主催の第20回「市民のための健康講座」(大糸タイムス友の会、大北医師会、大町市共催)がこのほど、大町市の大町商工会議所で開かれた。来場者約50人が吉村医院(松川村)院長の吉村一彦さんを講師に、健康長寿の秘訣として「栄養」「身体活動」「社会参加」の重要性を学んだ。


 健康長寿は約束されたものではない。日本の平均寿命は平成26年度の平均で女性が86・99歳、男性が80・75歳。健康寿命では女性が74・21歳、男性が71・19歳。その差の期間は家族や介護職など周囲の世話になりながら生活しなければない。
 介護はする人にとって大変だが、される人にとっても大変。原因を知るのが、健康寿命を延ばすうえで最も重要なこと。寝たきりの原因として、最も多いのが脳卒中。女性では特に股関節、膝関節の疾患は体の自由を奪ってしまう。認知症や心疾患もある。
 死因の3分の1はがん、6分の1が脳卒中、6分の1が心臓病。合わせて3分の2を占める。がんと動脈硬化を回避した生き方をすることが重要。動脈硬化の一番の危険因子は加齢だが、年を取らないようにするのは不可能。予防方法はタバコを吸わない、食事をしっかりとり運動をすることを心掛けることが重要。横になってテレビを見るような生活習慣が、動脈硬化を早めてしまう。油っこい食事ばかり食べるのも良くない。
 私が高校1年の時、将来何になりたいか取材で聞かれ、「医者になりたい」と答えた。言葉にしたことで、漠然とした思いが、確たる信念に変わった。言葉には偉大な力がある。「今日から歩く」「余分なものは食べない」「禁煙する」という言葉を周囲に宣言してほしい。
 高血圧は動脈硬化の危険な因子。高血圧を抑える薬を利用しながら体を動かし、社会参加をして頭を使い、動脈硬化から自分を救ってほしい。薬で血圧が下がらない人も、塩分を1日3c以下にすれば、ほとんどの症例で改善する。
 信州人で計ってみると1日10〜12c。厚労省は女性が8c、男性が9c以下を推奨している。高血圧の場合は女性が5c、男性が6c以下。ブラジルの先住民ヤノマモ族は1日1cほどの摂取量で、動脈硬化がほとんどない。腎臓障害がある人は厳しい減塩で食欲不振などが生じることがあるので、医師と相談してほしい。



食事と運動で動脈硬化予防


 全国の100歳以上は平成29年、6万7824人。47年連続で過去最多を更新している。昭和38年に老人福祉法が制定された当時は、わずかに153人だった。高齢化が急速に進んでいることがわかる。
 平均寿命は昭和16年、女性が53・96歳、男性が23・9歳。戦争中だったので出征して亡くなる人が多かった。昭和26年は女性が64・9歳、男性が60・8歳。戦後の貧しい頃で栄養状態も良くなかったが、ここまで延びた。
 沖縄県は昭和60年、世界に長寿地域を宣言した。沖縄料理に注目が集まり、豚肉、豆腐、沖縄野菜などを食べていることが分かった。特に豚肉。良く煮込んで脂肪分を取り除き、食べていることが、大きな要因だったのではないかという考察もあるが、「ジャンクフード」の普及により転落してしまった。
 それから20年、長野県がトップになっている。長野県民は非常に野菜を食べる。世界の長寿地域では緑黄色野菜と大豆製品が多く食べられている。大豆製品は1日100c食べるのが望ましい。納豆のパック1個が80〜100c。
 フィンランドでは魚を豊富に食べるイヌイット族と、牛肉や豚肉などの高脂肪食を食べる国民を比べると、明らかにイヌイットの方が動脈硬化が少ない。魚の中に含まれるEPA、DHAをたくさん取ることで動脈硬化の抑制が図られる。
 お酒は1日平均5勺(1合の半分)が望ましい。飲む量が増えると、肝臓内で「非正規」の酵素が増える。すると発生した活性酸素が肝臓障害を引き起こすことがある。上手に飲むには1日おき。ほろ酔い気分でやめましょう。
 家の中に閉じこもると、運動をしなくなることで筋肉が衰え、体重も減少する。筋肉は活性化させることで太くなり、強くなる。すると筋肉の細胞からマイオカインという物質が分泌される。マイオカインは動脈硬化防止や糖代謝に役立つ。筋肉は自分の体調に合わせ、座った状態などでも鍛えることができる。大豆製品や脂を除いた肉などたんぱく質をしっかり食べ、運動をすることが重要。運動は走らず、歩くのがおすすめ。







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