「ひざ・腰の痛みはこわくない」
市民のための健康講座



 ひざや腰の痛みは、日本人の体調不良の上位に上がり、不調を訴える人の3人に1人を占めている。腰やひざはひとがひとらしく生活するためにとても重要であり、病気になると歩行が困難になる。歩行が困難になれば、寝たきりやそれによる認知症になる危険性もある。健康な状態で生活できる「健康寿命」が長くなることが重要であり、寝たきりになることを防止して老後を健康に過ごすため、ひざや腰を大切にすることは非常に重要である。



腰の痛み


腰の痛みを訴える方は、若い世代からお年寄りまで非常に多い。骨の密度が低くなる骨そしょう症は高齢の女性に多く、骨がもろくなりすぎると、痛みや骨折につながる。痛みを放置すると転びやすくなり、転倒などにより、大腿(だいたい)骨の付け根などを骨折し、放置すると歩けなくなってしまう。
骨そしょう症に対する薬は多いが、骨を若い時と同じように強くもとどおりにするわけではない。改善には生活習慣が重要で、運動不足の人や、食べ物の好き嫌いがある人がなりやすい。人間の骨は、運動をすればするほど、刺激で強くなり、歩くことや体操などの運動を行ってもらいたい。カルシウムを効率的に摂取するには、小魚や牛乳に限らず、バランス良い食事が重要。喫煙やアルコールも骨をもろくするため、適度な量を心掛けてほしい。
 腰の痛みには、骨そしょう症以外にも多くの原因があり、腰部脊柱(せきちゅう)管狭窄(きょうさく)症になると変形した骨が脊髄(せきずい)を圧迫し、尻から足にかけてしびれや痛みを伴う。お尻から足にかけての痛みを座骨神経痛というが、このような症状を感じた場合、検査をすると分かるので、病院で症状の原因を調べたほうが良い。



ひざの痛み


 ひざの痛みを訴える患者も非常に多く、ひざ関節症は、軟骨がすり減り軟骨の下の骨までなくなってくることにより痛みが発生する。女性に多く、歩き始めや、立ち上がるときに痛みを感じる。痛みにより動かなくなると太り、太るとひざに負担がかかるために痛みが強くなり、さらに転びやすくなるという悪循環に陥る。転倒は骨折など大きなけがにつながりやすく、大きな骨折は寝たきりの原因となる。
 治療は、お灸(きゅう)やマッサージなど多くあるが、一時的に痛みをとるだけで、すり減った軟骨が元に戻ることはない。サポーターを使うとしっかりするように感じるが、頼りすぎると逆に筋肉が衰える。変形したひざに対してこのような治療だけを長い間おこなっていると徐々に痛みが強くなり歩く力も弱くなるので、注意してほしい。



ひざの治療


 厚生労働省により効果が認められた薬は、保険を使い医者が処方することができる。これに対してグルコサミン、コンドロイチンなど軟骨に効果があるといわれている物質の研究が行われているが、現段階では明らかな効果は十分に証明されていない。
 痛み止め、消炎鎮痛剤は痛みをとるだけでなく、炎症を抑えることができるが、長期的に飲むこと必ずしもいいことではない。軟骨を保護する働きのあるヒアルロン酸の関節への注射は、関節を保護することができるが軟骨を再生するまでの効果は期待できない。足の運動、リハビリはひざ周りの筋肉を強化することで、血行が良くなり、痛みの改善が見込める。しかし、いずれの治療も、すり減った軟骨が元には戻るということではない。



根本的な治療


 根本的な治療には手術がある。軟骨と骨がすり減って変形した関節を切りとり、金属と特殊なプラスチックでできた人工関節を入れることで、痛みを取り除くことができる。O脚に変形してしまったひざがまっすぐになることで、歩きやすくなる。手術を受ける前はひざの変形のために車いすを使っていた患者さんは、手術後足が真っすぐに伸びつえなしで歩けるようになった。
 人工関節は現在さまざまな製品が使用されており、一式数十万円するが、日本ではすべて保険が適用となるため、患者さんの負担は少ない。手術は約1時間で済み、入院期間は約1か月。手術の翌日から立つ訓練を始め、入院中にすべてのリハビリを行ってしまうため、退院後に通院の必要がない。



豊かな老後のために


 すり減りが少ない人など、必ずしも人工関節手術を勧めないが、
地道な治療できちんと治すことが重要。歩けるようになるため、患者さんと相談して手術を選択する。歩ける豊かな老後をつくるため
患者さんにも「他人まかせにせず、しっかり治すぞ」という気持ちを持ってほしい。
医者だけでなく、リハビリや看護あるいは退院後の福祉などに携わるスタッフ全員が、ひざの手術に関して理解しているエキスパートであるチームを持っている病院であることが大切。システムが整い、病気に対する実績のある病院を選んでほしい。
 「つえなしで歩けるようになった」、「おじいさんと旅行に行けるようになった」など、医者にとっても患者の症状が良くなることは喜び。病気を心配しすぎて動かないことは損。どんどん動き、明るく伸び伸びと毎日を過ごしてほしい。






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