「ザ・前立腺」
市民のための健康講座



前立腺の病気に理解
市立大町病院井上科長が講演 本社健康講座
 男性特有の臓器である前立腺。高齢者を中心に、前立腺肥大症や前立腺炎、前立腺がんなどの病気が心配されている。このほど開いた本社主催・「市民のための健康講座」にも200人が訪れるなど、関心の高さが感じられた。講座での、市立大町総合病院の井上善博・泌尿器科長の講演内容を採録した。



前立腺と肥大症


 前立腺はぼうこうの下、恥骨という骨の奥下にあり、腫(は)れは外から見えるものではない。前立腺の機能は排尿の調節と、精液に含まれ精子を活性化させる前立腺液を分泌します。前立腺の中を尿道が通っており、肥大症のときは尿道を圧迫するために残尿になる。外にできるがんが大きくなった場合に排尿困難などの症状が出たときは、すでに進んでいる状態が多い。



病状判断の検査


検査で避けられない直腸診は、おしりから指を入れて前立腺の大きさや硬さを診断します。つらいですが、やらなければいけない検査です。正常な前立腺は、手を合わせた親指のつめの大きさくらい。がんの場合は、骨のように硬く触れる。
 排せつ性尿路造影では、丸いはずのぼうこうを肥大症の前立腺が押し上げてへこませるのが見えます。超音波検査では影が出ます。尿流量測定は秒間に出る勢いや時間を測る。正常なら秒間の量が15_gくらい、時間が30秒くらいなら問題なく、排尿に1分以上かかるとかなり出が悪い。
 自覚症状は、まず頻尿。トイレの回数が多く、夜トイレに行くようになる。次に時間がかかるようになり、おしっこが残るようになる。さらに進むと尿が出ない尿閉となり、ぼうこうに尿がたまりすぎて、腎臓の機能がだめになるケースがある。ここまでくると命にかかわります。



治療投薬と手術


 薬物療法には3つのタイプがあります。植物タイプの漢方薬で粘膜の炎症を抑える薬、次に抗アンドロゲン(男性ホルモン)剤。α(アルファ)ブロッカーの3つがある。
 抗炎症剤はむくみを抑えるだけの作用です。抗男性ホルモンは直接前立腺に働き、物理的に小さくする薬。αブロッカーは尿道の交感神経に働き、機能的に尿道を広げる薬で、今はこれが主流です。
 手術の方法は、内視鏡とおなかを切る2つの方法がある。どちらを選ぶかについては、前立腺の大きさで分けます。内視鏡では1時間から1時間半くらいと制限がある。それ以上は出血や血圧低下の心配があり、最近は医者の技量や内視鏡が良くなり、予想重量50〜100cまでは内視鏡的にできる。
 内視鏡は尿道から入れ、電気メスでかんなのごとく削り取っていく。削り取った組織片は尿道に落ちるが、内視鏡を通して取り出します。100cを超えるとおなかを切ったほうがいい。へその下を切開し摘出します。
低侵襲な処理として、コイルを入れて広げる尿道ステントという方法があるが、ほどんどお勧めしません。寝たきりや認知症などの患者に使います。






図=肥大症になった前立腺(左)、抗ホルモン剤とαブロッカーの働き




前立腺炎の病状


 尿感染症のひとつで、男性の生殖器には炎症を起こす場所があり、尿道から逆行して熱が出ると言われます。急性細菌性前立腺炎は、尿道から細菌が侵入する。細菌培養や尿検査で診断し、抗生物質を投与し、高い熱のときは入院治療の場合もある。数日でけろっと良くなります。
 もうひとつは前立腺痛。泌尿器科を悩ませるもので、基礎疾患がないのになんとなく変とか、またが痛い感じがするなどが多い。異常がなくてもなかなか治らず、いくつもの泌尿器科を巡礼する人もいる。おしりから指を入れて前立腺マッサージしたり、前立腺液の異常を調べる。治療はいろいろあるが、治りが悪い病態。αブロッカーや漢方薬など使って様子を見ます。



前立腺がんとは


 最近は芸能人の間寛平さんなどで話題になった。わが国のがん死亡率の中で、前立腺は上昇傾向にあり、10年後には肺がんに次いで男性の死亡の第2位になると言われる。
 なぜ患者が増えたかというと、がんができるまで長生きするようになったから、高齢化社会がひとつ。発生率の増加は、食べ物が欧風化し、動物性脂肪が増加したためもある。人間ドックで調べるようになり、発見率が高まった。食生活の違いが大きい。何を食べればいいか。穀物と豆など、昔の食べ物に戻せばいいらしいです。



がん検診の意味


 発見のきっかけは、検診で前立腺特異抗原(PSA)の上昇を調べます。検査値は4・0を基準にします。排尿障害などの症状が見られたならば、がんが進行して尿道を圧迫して出が悪くなる。また、前立腺肥大症と合併する場合もある。症状を訴えた人の4%にがんが見つかっています。
 昨年ごろから、前立腺がんの検診をやる意味があるのかというのが話題になった。まだ結論が出ておらず、対策型の検診に意味がないと言われるが、PSA検診で早期の前立腺を見つけることには意味がある。大町病院ではMRIを積極的に取り入れ、針生検の前に画像診断でチェックしている。私のところでは触診やMRI、数値がおかしい場合は気をつけている。
 家族性の前立腺がんというのがある。親やきょうだいにがんの人がいればリスクは倍に上がる。家系内に3人いれば5倍。身近な方がかかっていれば、調べたほうがいい。
治療にはいくつかの方法がある。手術は前立腺、精のう、リンパ腺をとり、尿道と前立腺をつなぐ。出血や尿失禁、性機能障害などの合併症のリスクがある。放射線は体外照射と、早期では体内からやる方法がある。薬と組み合わせ、いい方法とされている。内分泌療法は女性ホルモンを使うものだが、心臓の合併症が出やすい。化学療法は抗がん剤を用いる。待機療法は何もしないで様子を見る方法。期待余命と比べ、手術のリスクを避ける。



最適の治療考えて


 一般的には、余命が10年以上ある人(75歳にならない人)は手術しても良い。75歳を過ぎた方は放射線や内分泌療法をしたほうがいい。60代の人は手術や放射線などの根治療法をしたほうがいい。
根治術をやっても、再発がありえる。前立腺ガンが転移するまでには8年かかる。死に至るまで5年。胃がん、大腸がんと違う。手術をやっておけば、再発しても放射線という治療手段が残せます。自分にとって何が望ましい治療なのか難しい。ご本人、患者さん家族に現状とステージをお話しし、どれを選ぶべきか相談し、考えてもらうようにしている。
 割と長くがんと付き合うことが多い。10年くらいお元気な方がいらっしゃる。





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