「禁煙への道」
市民のための健康講座



八坂診療所所長 戸部道雄氏


極めて高い 日本の喫煙率

 喫煙の現状について。日本における喫煙率の推移。1995年から2008年までの厚生労働省の調査結果から。男性は53%の喫煙率が徐々に低下し、2000年までに50%を切るようになってきた。右肩下がり。この傾向は現在でも進んでいる。現在の男性の喫煙率は30%、女性は10%ほど。だが、先進国のなかでは日本の喫煙率は極めて高い。
 タバコによる健康被害は、大きく分けて、ガン、動脈硬化など循環器疾患、呼吸器疾患の3つがある。タバコはどうしてこれほど多くの病気を引き起こすのか。タバコには200種類以上の有害物質が含まれている。ニコチン、タール、一酸化炭素が代表的で、発ガン性の物質だけで優に60種類ほどあるといわれる。
 心筋梗塞、脳卒中などを引き起こす原因であるニコチン。依存症にもなるが、細い血管を収縮させる作用がある。血圧が上昇することにより、動脈硬化になる可能性が高まる。
 末梢(まっしょう)動脈疾患もある。手足の細い血管のこと。血管病のなかで国が指定している原因、治療法ともに不明の難病はバージャー病と脈なし病の2種類。
 バージャー病の診断の決め手はヘビースモーカーであること。若い40代以下の男性におこる病気で、1日に吸うタバコの本数と喫煙年数によって導きだされるブリンクマン指数400以上の男性に見られる手足の先からだんだん血管がつまる病気。手のしびれ、足の裏が冷たいといった症状を放っておくと悪化。切断を余儀なくされる。タバコには怖い病気がある。



見落とせない 受動喫煙被害


 受動喫煙。お父さんがタバコを吸い、その煙を奥さんと子どもが吸ってしまうイメージ。
 自分が吸ってはいないものの、副流煙によりさまざまな健康被害がでてきてしまう。肺ガン、慢性疾患、ぜんそく悪化、動脈硬化などがある。小さい胎児が生まれるなど妊娠に異常をきたす可能性もある。受動喫煙も決して見落としてはならない。
 受動喫煙も含め女性の喫煙は、卵巣機能を低下させる。胎児に悪影響を及ぼす。流産や胎児の発育を遅らせるなど胎児や妊娠に対する合併症がかなり増える。子宮頸ガン発病の可能性を高くする。



タバコあらゆるガンに影響


 喫煙による生存率への影響を覚えておいてもらいたい。吸っている人と、吸っていない人の平均余命は10年は違ってくる。
 タバコはあらゆるガンに影響する。多いのは喉頭ガン。続いて肺ガン。喉頭ガンで見ると、喫煙者は、吸っていない人に比べて32倍の確率でかかってしまう。
 脳卒中や脳出血、脳梗塞などとタバコの関係性見る。吸っていない人がなる率を1とすると、1日20本吸っている男性は1・6倍、女性は1・4倍とふくれあがる。
 タバコは健康被害を及ぼすということが日本でも認知されてきた。タスポ導入や歩きタバコ禁止、公共施設での喫煙禁止など喫煙をめぐる社会情勢も変わり、禁煙の流れも大きなものになってきた。
 実際にやめるとどんなことがいいのか。せきやたんがとまる。肩こりなくなる。食欲が出る、目覚めよくなる。口臭がなくなるなど。



禁煙で体調や社会生活改善


 たばこを考える上で大事なことは「なぜ吸うか」。たばこを吸うことは病気であるとの認識が重要。
 病名はニコチン依存症。有害であることが分かっていても持続的に吸いたくなる。他の行動や義務よりも喫煙行為優先権を与えてしまうもの。
 ニコチンは1分もしないうちに血液の中に入る。脳の奥にある受容体とニコチンが結合するとドーパミンが放出される。ドーパミンには、イライラやストレスなどタバコの離脱症状を抑える効果がある。ここでひとつのサイクルができてしまい、知らず知らずに依存症に陥る。
 禁煙外来で用いている薬は、受容体とニコチンの結合をブロックする効果がある。さらに、少量のドーパミンを放出させる作用もあることから、タバコを吸わずしてもタバコを吸ったときのような満足感が得られる。
 禁煙外来の話。保険を使った禁煙治療を受けるには以下の条件を満たすことが必要。▽ニコチン依存症を判定するテストで5点以上、▽1日平均喫煙本数とこれまでの喫煙年数をかけた数字が200以上、▽1か月以内に禁煙を始めたいと思っている、▽禁煙治療を受けることへの文書同意。
 禁煙外来は12週間かけて治療していく。八坂診療所での20年7月から23年3月までの禁煙外来受診者は51人(男性41人、女性10人)。そのうち禁煙成功が31人だった。成功率は60・7%。しかし、女性や60歳未満の成績は不良。女性の成功率は30lほど。
 呼吸の改善や精神的安定、味覚の回復などが禁煙の効果。禁煙すると体重が増えるという話を気にする人がいる。八坂診療所のデータを基に、12週間きちんと通院した人の平均増加率がプラス2・14%。たばこをやめると増えてしまうのは本当。ほとんど体重変化がなかった人は25lほど。
 禁煙外来から見る効果。呼気一酸化炭素濃度試験結果や吸いたいという気持ちの変化は、禁煙開始から短時間で改善が認められた。禁煙により体調や社会生活の改善などを体感でき一定の効果がある。




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