「叫び」に耳傾ける 老年期の精神障害
市民のための健康講座



平林メンタルクリニック院長 平林一政氏


 自分のなかの不安や思いなど、心で悩んでいることを多くの場所でもっと訴えるべきである。家族はじめ周囲は、老年期の不安定な状態からくる心の病を「叫び」として捉え、常に耳を傾ける姿勢が必要である。

 心に波のある有名な病気に、そううつ病がある。人生において、自身が与えられた課題をクリアしようとするとき、うつにならざるを得ない時もあるはず。
いずれにせよ、心に波をもっているのは心の「常態」である。ただ治めればいいのかといわれればそうではない。課題を聞きとらなければならない。

 定年後など、「粗大ゴミ」にならないようにするにはどうしたらいいのか。高齢においてこそ、日々悩んで、日々道を切り開いていかなければならない。訴えなければいけない生き方やつかみ取らなければいけない考え方など課題はたくさんある。

 さらには、生きてきたなかでの失敗など自分で慰めていかなければならない。内に秘めた恨みつらみの部分を一生を通じて、自身でくみとっていかなければ人生の意味がない。

 いら立ちやうつによる死にたいなどという感情含め内心に秘められた芽を見つめ、育てる、作業をすることで、自分自身の人生が報われ、「心のゆがみ」を癒やしていくことにつながる。

 高齢者は社会から除外される時代ではない。常に訴え、知恵を出していかなければいけない時代にきている。

 きょう覚えたことを新たにつかみ取る必要がある。高齢においても遊んではいられない。日々学習し、常に頭を使っていくべき。そうしたことが老年期の不安定状態の解消につながる。

 老年期こそ、自身の一生をまとめあげる、完成させる時期である。自らが幼かったころからの、いろいろなやり残しの課題を含めて見つめなおし、課題解決に取り組む大切な時期と考えてほしい。ときに、心のバランスを崩してさえも取り組んでもらいたい。




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