大糸タイムス主催、大糸タイムス友の会・大北医師会・大町市共催
難聴の種類と原因
市民のための健康講座
平林耳鼻咽喉科 平林源医師
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大糸タイムス主催の第13回市民のための健康講座(大糸タイムス友の会・大北医師会・大町市共催)が先月、市文化会館隣接のフレンドプラザ大町で開かれた。大町市常盤上一の平林耳鼻咽喉科医院の平林源院長による「聞こえのトラブル〜難聴の種類と原因について〜」と題した講演に100人を超える聴講があり、耳の健康について学んだ。 |
耳の主な疾患を紹介しながら、耳の構造や聞こえに関する一般的なこと、最近増えている滲出(しんしゅつ)性中耳炎を中心に話す。
人が聞き取ることができる音というのは一般的に20ヘルツから2万ヘルツと言われている。
主に日常生活に使う音は500ヘルツから2000ヘルツ、場合によっては4000ヘルツ。
耳の聞こえが悪くなると、周囲との会話が困難になる、危険が察知できず事故に遭いやすくなる、発する声が大きい、耳鳴りが大きくなりやすい、などの弊害が出てくる。
幼児の場合、難聴が強いと言葉を覚えにくくなる。言葉は耳から入ってくる音によって覚えるもの。赤ちゃんというのは、ちょっとした物音に敏感である。「うちの子は静かに寝ていて良い子だ」ということを耳にすることもあるが、静かに寝ている子の中に、難聴の子が見つかることもあるということを頭に入れておいてほしい。 |
耳の構造と病気の種類
耳の構造を説明する。音が外耳から入り鼓膜を振動させる。この振動が中耳の耳小骨、内耳のリンパ液を介して内耳の神経を刺激する。その刺激が神経を通じて頭の中に入り音として認識される。
この経路のどこかに異常が生ずると聞こえが悪くなる。
@外耳道が詰まると聞こえが低下する。耳あかが詰まっても聞こえが悪くなる。特に湿った耳あかの場合には外耳がふさがりやすくなる。湿った耳あかは人種によって異なるが日本人の2〜3割で見られる。
A中耳の病気としては、急性中耳炎、慢性中耳炎、滲出生中耳炎、航空性中耳炎、外傷性鼓膜穿孔などがある。
B内耳の病気としては突発性難聴、メニエール病、老人性難聴などがある。
外耳から中耳までの間のトラブルは治療によって聞こえがよくなる可能性が高いが、内耳やその奥に原因があると、聞こえが治りにくくなる。
耳鳴りが生じたり、つまった感じがしたら、難聴が始まっている合図、早期の受診を勧める。 |
小児と高齢者に多い滲出性中耳炎
滲出性中耳炎は最近小児と高齢者の間で増えてきている。耳管が詰まったり、働きが低下することで、鼓膜がへこんで耳の中に滲出液がたまってしまう病気である。聞こえが悪くなったり、耳がつまったり、自分の声が響くようになる。
耳管は、中耳と咽頭をつなぐ直径1_、長さ3〜4aの管である。中耳の圧力を調節し、中耳内の分泌物を処理する働きがある。
発症年齢は4〜6歳と高齢者。0〜3歳の乳幼児にも増えているといわれる。急性中耳炎の後に発症することが多い。鼻の一番奥にあるアデノイドの肥大や鼻のアレルギー、副鼻腔炎などが原因となることが多い。
滲出生中耳炎の検査は、聴力検査、チンパノメトリー、レントゲン検査、内視鏡検査などがある。子どもだと、聞こえが悪くなっても訴えることが少ない。テレビを見る時、前の方に行ってしまうとか、ボリュームを大きくするなどは、判断の助けとなる。
治療としては、副鼻腔炎やアレルギーなど鼻の病気を治すことが最も大切である。治療方法は、薬を細かい粒子にして鼻の穴から圧力をかけて入れる方法、鼻から耳へ空気を通す方法などがある。内服薬もある。
このような治療で治らない場合は鼓膜切開を行う。1回の切開で治る場合もあるが、治らない場合は鼓膜にチューブを入れる。チューブは完治後に抜かれる。
滲出生中耳炎を放っておくとどうなるか。自然に治ることもあるが、一部の人は、真珠腫性中耳炎、癒着性中耳炎に移行して将来的に手術が必要になることもある |
身近な耳疾患治療の方法
身近にある耳の主な疾患を話す。
@航空性中耳炎は、飛行機の上昇、下降時の気圧の変化によって耳が痛くなるもの。予防としては、唾を飲む、水を飲むなど飲み込む動作を多くする。
A突発性難聴も最近多い。ある日突然、聞こえが悪くなるものである。耳の内耳の異常で、原因不明の治りにくい病気である。耳鳴りや耳の詰まり、めまいを伴うこともある。できる限り早い段階(できれば1週間以内)で治療すれば治りやすい。治療はステロイド注射や内服などがあるが安静が第一。
症状が強い場合には入院して治療が行われる場合もある。
B音響外傷も最近、多く聞かれる。たとえば爆発音など、大きな音によって聞こえが悪くなる場合である。ロック難聴、ヘッドホン難聴(イヤホン難聴)、騒音性難聴などがある。
コンサートに出かけスピーカー近くに長時間いたら聞こえが悪くなり、治療を行ったが治らず、難聴が固定してしまったケースもある。
音響外傷は内耳の有毛細胞が障害を受けたことにより難聴になる。急性期治療の場合は治ることもあるが、1度障害を受けた有毛細胞はもとに戻りにくい。
周波数が高く、大きい音には危険がある。痛いと感じるほどの音は難聴の原因となりやすい。予防としては、長時間音楽を聞かない。音量を下げる、耳栓をするなどの対処が必要である。
Cめったにはないが、聴神経腫瘍が見つかるケースもある。内耳から出ている神経で、聴力に関係した聴神経と、前庭神経にできる腫瘍である。
ほとんどが良性であるが、顔面のまひが生ずる場合もある。治りにくい難聴、片方だけの難聴、進行性の難聴、めまいを繰り返す場合はCTなどの検査が必要である。 |
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